人(霊止)還りの道 – 751編

オイ
汝はこの間の戦争に行つたといふ話だが
金鵄勲章でも貰つたのか
花々しき功名手柄をして帰るなぞといひよつて
近所合壁に送られ
大変な勢ひであつたが
凱旋祝ひも根つから聞いたこともなし
いつの間にか吾々労働者仲間に舞ひ戻つて来よつたが
一体戦ひの状況はどうなつたのぢやい

相手の勢ひに猖獗にして
吾軍は手もなく打ち破られ
みじめな態で四方八方へ
一時は散乱してしまつたのだ
その時
俺は軍夫として
実のところは後ろの方に輸送をやつてゐたが
大砲の弾が
間近にドンドン落ちて来るので
何奴も此奴も腰を抜かし
肝腎の軍夫が
兵隊に担架に乗せられて運ばれるといふ惨めな態だつたよ

あれだけ軍器の整ふた軍の精兵が
なぜまた暴民団体に脆くも打ち破られたのだ
チとバランスがとれぬぢやないか

そこがいはゆる戦争は水物といふのだ
兵数の多い方が勝つとも
武器の整頓した方が勝つとも
または武器の調はない兵数の少ない方が勝つとも
それは時の運だから分らないワ
何しろ相手は一兵卒に至るまで地理には精通してゐる上
あれだけの人氣だつたから
その虚勢だけでも勝なねばならぬ道理だ
わづか二万ぐらひの叛乱軍に五万の吾兵が
飛行機も大砲も輜重車も
何もかも打ちやつて
命カラガラ敗北してしまひ
相手は敵の武器を応用して
あくまでも頑強に戦ひを続けるものだから
吾軍はたうたう首都を占領されてしまつたのだい
本当に強い者の弱い
弱い者の強い時節になつたものだ

さうすると
俺達も社会の弱者として
地平線下に汗にひたつて蠢動してゐるのだが
何時かまた頭をあげる時があるだらうかな

あらいでかい
有為転変の世の中だ
いつまでも世は持切りにはさせぬと
どつかの神さまもいつてゐるさうだから
未来は必ず吾々プロレタリアの天下だ
まあまあクヨクヨ思はずに
暫く辛抱するのだな
今日も今日とて
丸で上に立つてゐる役人どもは
子供につつかれた蜂の巣の番兵蜂のやうな神経過敏になつてゐやがるのだからのう

本当に約らぬ世の中だの
何時までも此のままにしておこうものなら
世界はメチヤメチヤになるだらうよ
どうしてもこの調子では十年たたぬうちに大革命が起るだらうと思つてゐるのだ

そらさうだ
生活難や就職難の叫びがこれだけ喧しくなつてゐるのだもの
ブルジヨア階級や役人共も可いかげんに目を醒ましやがらぬと
たつた今
俺達と地位転倒して彼奴等は惨めな態になるだらうよ
俺やその世が来るまでは死んでも死なれないのだ
先祖代々から彼奴等に虐げられて来たのだもの
祖先の恥を雪ぐのは
吾々子孫たる者の義務だからなア

誰でもいいから
確りした犠牲者が現はれると可いのだがなア
さうすりや俺達ア
漁夫の利を占めて安楽に暮せるのだけれど
何奴も此奴も小ざかしい人間ばかりで
自分の身命を賭して矢面に立つといふ大馬鹿が出て来んで
サツパリ駄目だ
かういふ時にや
どうしても大馬鹿でなけりや
世界の改造が出来ないからのう

鈴木慧星 SUZUKI Satose
Shamanism Consulting.

略歴経歴

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