「人(霊止)還りの道」363編


大変いい心持ちになつてきたぢやないか
九死一生の場合にあたりかやうな結構な果物を下さつてこれで吾々も生き返つたやうな心持ちになつたぢやないか
九分九厘になつたら神が助けてやらうと仰有るのはこのことだな
それにつけても玉都売魂(タマツメムスビ)の果実からあのやうな数多の女神が現はれたところを見るとあの玉都売魂の果実を頂いたらどんな結構なことになつたか知れないよ
しかし天から与へられないのだからこれも仕方がないわ
神様も皮肉ぢやないか
石・瓦のやうな味で苦い汁が出るとおつしやつたあの果実からあんな美はしい女神が出るとは思はなんだ
これは何かのお諭かも知れないぞ

なにほど天国といつてもやはり苦い目・苦しい目をいたさねば都率天へは上れないといふお示しだらうよ
一つの功もたてずに天国だと思つてよい氣になつてブラついてをつては本当の栄えと喜びは出て来ない
一時の幸福を充たすだけの御神徳ではつまらぬぢやないか
これから一つ心を取り直して天国で一働きをやらうぢやないか

二人はまたボツボツと歩み出した
右側の二三十間ばかり下の大道から阿鼻叫喚の声が聞こえて来た
二人は期せずしてこれを見下ろせば馬車・人力車・自動車その他種々雑多の人々が往来してゐる
これは現界の人間の生活の有様であつた
よくよく見れば自動車の中には角の生えた鬼や口の耳まで裂けた夜叉のやうな女がシガレツトをくゆらしながら意氣揚々として大道を我が物顔に走つてゐる
憐れな正直な人間が自動車・馬車に轢き倒されたり或ひは肉を削がれたり血を絞られたり餓鬼となつて重い荷を負ひ生命からがら往復してゐる
その惨状は目もあてられぬばかりであつた
さうしてゐるとまた二三十間右側の大道から阿鼻叫喚の声が聞こえてくる
二人は又もやこの声の方に身を寄せ走り寄り足下を見おろせば軍隊が弓矢を射かけ槍を打ち振り血刀を揮つて十重二重に取り囲み母娘二人の命をとらむと息まいてゐる
母娘二人は一生懸命に言霊を奏上するや数限りなき狼現はれ来たつて軍隊に向かひ縦横無尽に荒れ狂ひ噛み倒したがひに血潮を流して争ひ狂ふ光景が歴然と見えてきた
これは幽界の地獄道の真中であつて戦慄つべき惨劇が繰り返されてゐたのである
かかるところへ以前の女神いづこともなく現はれ来たり

お二人様
あなた方は何か御覧になりましたか
いや何か高見から御見物をなさいましたか

ハイ
いろいろ雑多の惨劇が目に映りました
吾々は幸ひかやうな天国へ救はれ神のお諭のごとく高見から見物いたさうよりも仕方がないぞといふ境遇におかれました
これを思へば人間は決して悪い事は出来ませぬなア
何事も神のまにまに任すより人間としては採るべき手段もござりませぬ
何とも申し上げやうのない可憐さうのことと存じます

国常立大神様はかくのごとき現界幽界の亡者を救はむために三五の御教をお開き遊ばしたのでございますな
一掬同情の涙があればどうしてこれを看過する事はできますまい
あなた方お二人の御感想いな今後のお採りなさる手段をお伺ひいたしたいものでございますなア

ハイ
私は何事も惟神に任すより道はござりませぬ
人間がどれだけ焦慮つたところでどうする事もできませぬから

二十世紀の宗教信者のやうにあなたもよほど惟神中毒をしてをられますなア
尽すべき手段も尽さず難を避け易きにつき我が身の安全を守り世界人類の苦難を傍観してたうてい人力の及ぶかぎりでない何事も惟神に任すより仕方がないとは実に無責任といはうか無能といはうか卑怯といはうか人畜と申さうか呆れはてたるその魂
さやうな事でどうして衆生済度ができませう
お前さまたち両人は神の恵によつて高天原の門口へ臨みながらそんな利己主義の心では局面たちまち一変して八万地獄の底の国へたつた今落ちますぞや
今日は他人のこと明日は貴方のこと
因果は巡る小車の罪の重荷のおきどころ
どうして貴方は何時までも悠々楽々と天国の旅行がつづけられませうか
実にお可憐さうなお方だなア
少しは貴方の良心に御相談してみなさい
左様なことでようまあ○○教だの△△教だのといつて世界を歩けたものですなア
あなたのやうな無慈悲な方にはもはやこれきりお目にはかかりますまい
さやうならば足許に御注意遊ばして御機嫌ようお越しなさい

・・・「人(霊止)還りの道」364編へつづく

関連記事一覧

無料メルマガ

お名前

メールアドレス


(ドメイン satose.jp 受信設定)

ブログポリシー

鈴木慧星 BLOG の知的財産権および財産・プライバシー・肖像権等その他の権利を侵害する行為等を一切禁止します

鈴木慧星 BLOG へのソーシャルメディアに関するポリシーおよびルールとマナーに違反する行為等を一切禁止します