人(霊止)還りの道 – 768編

オイ
世も変れば変るものぢやないか
俺たちは世界から羨まれる□□□村の住民でありながら
祖父の代からみじめな小作人の境遇に陥り
働いて作つた米の大部分は△△△家に納め
肝腎の米は一粒も口に入らず
裏作の麦類を飯米として露命を繋いで来たが
今年から
お米を頂くことが出来るやうになつたのも
全く神様のおかげだよ
これでこの□□□村相当の生活が出来ることだらう
本当に嬉しいことだなア
〇〇〇の悪人もこの頃すつかり改心するし
泥棒までがあのやうに田畑を耕すやうになつたのだから
世の中も変つたものだなア

何といふても天与の産物を独占する者があつたため
吾々は苦しんできたのだ
かうなつたら村に苦情も起らず
愛神愛人の道も完全に行はるるであらう
なにほど信心せよといふても
今日食ふ飯もないやうな事では信心も出来ず
人がなにほど困つとつても助けることも出来ず
人の持つてゐるものでも
叩き落として取りたいやうに思ふものだが
かうして平等になつた以上は
悪事悪念は断たれるであらう
〇〇〇の奴
村中の憎まれ者だつたが
善悪不二といふて
あの奴があんな悪事を企みよつたものだから
吾々はこんな結構になつたのだ
悪人だつて憎めぬよ
悪が変じて善となり
善が変じて悪となるといふのは
大方こんな事をいふのだらうよ

〇〇〇の奴
ずゐぶん俺達を今まで苦しめよつたが
彼奴もこれで一切の罪亡ぼしになるであらう
なかなか氣が利いた事をやつた
××山の泥棒を引つぱつて来て
あんな荒い仕事をやり
また泥棒を役人に仕立てて
財産を横領しようとしたのは
吾々のたうてい考へつかない芸当だ
泥棒だつて元からの悪人ではないとみえて
あの通り朝から晩まで神妙に働いてゐるぢやないか
俺たちも
もすこし甲斐性があつたら
あれ達の仲間に入つてゐたかも知れないからなア

お前のやうな氣の弱い男はまア乞食くらゐのものだなア
俺だつたらきつと泥棒の親分くらゐに
あのままでモウ一二年経つたならなるかも分らなかつたよ
実のところ二三年前から考へてゐたが
そんな事をウツカリ相談するわけにもゆかず
一人の泥棒も心細いなり泣き泣き今まで暮れて来たのだ
一つ青年隊を召集して
〇〇〇を元の通り番太にこき卸した方が慢心せいでよいかも知れないよ

馬鹿いふな
四民平等とか
衡平運動とかが
盛んに行はれてゐる世の中に
いつまでも怪体な思想に囚へられてゐるものぢやない
△△△家があんた目に遇つたのも
何かの因縁だらう
われわれ人民の膏血を絞り
贅沢三昧に暮してきた報いだ
□□□村三百人の恨みが凝結してあんな惨事が突発したのだ
人間といふものは自分が難儀をして来ねば同情の起るものではない
博愛だとか
同情だとかいつてゐる者に
一人も博愛心や同情心を保つてゐるものはない
世の中を博愛と
同情の仮面を被りて胡麻かす贋君子
贋聖人ばかりだ

鈴木慧星 SUZUKI Satose
Shamanism Consulting.

略歴経歴

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