「人(霊止)還りの道」366編


ウンウン
痛い痛い
風の神の奴
暴威を逞しうしやがつて
この春さまの頭蓋骨を鉄槌でカンカンと殴りやがるやうな痛さだ
腹の中へは狐でも這入りやがつたとみえて
コンコンと吐すなり
中からかう咳が出ては副守の奴
関守に早変りしやがつたとみえる
本当に咳がチツとやソツとぢやない
痰と出やがつた
アハゝゝゝ
イヒゝゝゝ
痛い痛い
こりや雪公
一つ天眼通で風の神の正体を透視してくれないか

春公よ
あまり酒を喰つて寒風にあたると凍死するものだ
どうぞ凍死してくれと言つても
俺は凍死ばかりは御免だ
それよりも万劫末代生とほしになりたいからなア

こりや
貴様もよほど訳のわからぬ唐変木だな
俺のいふ透視といふのは
そんな怪体の悪い凍死ぢやないわい
腹の底まで何が憑いてをるか透視してくれといふのだ
アイタゝゝゝ
オイ早く透視せぬかい

俺は雪さまだから
あまり雪さまばかりに溺れてをると凍死する虞があるぞ
貴様の腹の中をちよつと見ると大変な腹通しだ
上げる下す
まるでこの峠の頂上の関守にはもつてこいだ
貴様も生命の大峠が来たのだから
これまでの因縁と諦めて
潔く成仏せい
風声鶴唳にもド肝を冷やし
びくついてゐるやうな関守では
たうてい生存の価値がない
よい加減に娑婆塞ぎは
冥土参りした方が社会のためだからなア

こりや雪
貴様は何といふ冷酷な事をいふのだ
ド頭をポカンとハル公にしてやるぞ

雪といふものは火のやうに温かいものでも
熱いものでもない
冷酷なのが当たり前だ
冷然として人の病躯を冷笑するのが雪さまの特性だ
しかしそれだけ熱があつては貴様もたまるまい
氷嚢の代はりにこの雪公さまの冷たい尻を
貴様の薬鑵頭に載せてやらうか
さうすれば
少しは熱が減退するかも知れないぞ

かう熱が高うては仕方がない
貴様の尻で俺の熱が下がることなら臭うても辛抱せうかい

よし
時々風が吹くかも知れぬが
前もつてお断りをいうておく
おい
ずゐぶん冷たい尻だろう
血も涙もない冷ケツ動物だから
熱病の対症療法にはもつてこいだ
実にケツ構な療治法だ
アハゝゝゝ

こりや
俺の鼻の上に何だか袋を載せたぢやないか
冷いやりするが
怪体な香がするぞ

これは豚の氷嚢代理に睾嚢を張り込んでやつたのだ
イヒゝゝゝ

アゝ苦しい
重たいわい
チツと重量を軽減するやうに中腰になつてくれないか

雪隠のまたげ穴をふん張つたやうな調子で
中心を保つてをるのだから重たいはずはない
熱病といふものは頭の重いものだ
おもひおもひにお神徳をとつたがよからうぞ

ウンウンウン
こら雪公
そんな氣楽なことどこかい
俺や
もう生命のゆきつまりだ
もちとシツカリ尻をあててくれぬかい

いやもう瀕死の病人に対し
応急療法も最早駄目だ
お前の一生も最早けつ末がついた
けつしてけつして娑婆に執着心を残し
踏み迷ふて来てはならぬぞ
大神様の御目が届かぬと思うて慢心をいたし
神を尻敷きにした天罰で
この清明無垢の雪のやうな身魂の雪さまに尻敷きにしられるのだ
因果応報
罰は覿面
憐れなりける次第なり
エヘゝゝゝ

こりや雪
貴様は俺が最前から聞いてをれば
春公さまに対し親切にしてをるのか
不親切にしてをるのか
あるひは介抱するのか
虐待するのか
テンと訳が分からぬぢやないか

かうゆきつまつた世の中
訳が分からぬのはあたり前だ
俺はゆきつまつた社会の反映だから
これで普通だよ
親切さうに見せて不親切の奴もあり
善の仮面を被つて悪を行ふ奴もあり
人を助けてやらうといつて甘くチヨロまかし
その実
人は死なうが
倒れやうが我不関焉だ
自分さへ甘い汁を鱈腹吸うて自分が助からうとする奴ばかりだ
こんな悪魔横行の世の中に
どうして真面目な事が出来やうか
俺の天眼通だつてその通りだ
当る時もあれば外れる事もある
社会の利益になる事もあれば社会の害毒になる事もある
それだから善悪不二
正邪一如といふのだわい
オツホン

人の難儀を見て貴様は平氣でゐやがるが
本当に怪しからぬ奴ぢやないか

俺は智慧の文珠師利菩薩だ
今朝も文珠師利菩薩が獅子に乗つて
ここを大変な勢ひで通つたぢやないか
それだから俺も春公の頭に腰掛け
尻からブン珠利菩薩となつて
あらゆる最善の知識を傾けて治療に従事してるのだ
この辛い時節に薬礼も貰はず
これだけ親切に介抱するものが何処にあるかい

お酒の酔ひに紛らして
一時なりと恐怖心
ごまかしくれむとガブガブと
木の実の酒に酔ひつぶれ
風吹く峠に大の字と
なつて倒れたその結果
風邪の神めがやつて来て
たちまち起る頭痛
カンカンカンと鉄鎚で
脳天くだくよな苦しさに
悶えゐたりし折りもあれ
三五の教の神司の生神が
現はれまして命をば
助けてトツコイ下さつた
こんな尊い神の道
どうして外にあるものか

あらし吹く
風に身魂を
もまれつつ
今は誠の人と
なりぬる

玉の緒の
命も魂も
助けられ
いかで背かむ
三五の道

朝夕に
大酒あふり
曲神の
すみかとなりし
吾ぞ忌々しき

惟神
神の御ため
世のために
尽さにやおかぬ
春の魂

・・・「人(霊止)還りの道」367編へつづく


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