「人(霊止)還りの道」618編


其方は何と申す姓名か

ハイ
私はおつやと申します

其方は何と申すか

ハイ
私は呆助と申します

おつや
其方は夫のある身をもつて
この呆助と私かに情を通じ
かやうなところへやつて来たのだな

ハイ
理想の夫がないものですから
やむを得ずこんな破目になつたのですよ
今日の結婚問題は
愛の結婚でなくて
財産結婚
門閥結婚
強迫結婚
強姦結婚
往生づくめの無理無体の結婚を強ひる世の中ですから
結婚沙汰が頻々として起つてゐます
恋愛を無視した因襲的結婚法は
かやうな問題を惹起する最も重大なる原因の一つとなるのです
自分が好いて自分が選んだ結婚関係ならば
それが仮令うまく行かなくても自分自身にその全責任があります
出来得るだけの努力をして現在の結婚生活をもつとも良きものにしなければなりませぬ
最初から自分以外の者が取計らつた結婚といふものは
少しも恋愛味が存在しませぬ
いづれ合せものは離れものだといふ流儀ですから
結婚の不祥事や
他に情夫をこしらへて三角生活を送るやうになるのは已むを得ませぬ
みな社会の制度が悪いのだから
自分の意思の合うたもの同士が結婚を自由にしたいといつて
お前さまらにゴテゴテいはれてたまりますか
女は決して男の玩弄物ぢやありませぬ
ヤツパリ一人前の人格者である以上は
男子の圧迫や強圧は許しませぬ
それだから無理結婚の夫を捨てて最愛の呆助さまと隠れ忍んで
耽美生活を味はつてゐたのです
これほど分り切つた道理を
社会の奴はみな盲目だから
嫉妬半分に
あのおやつは不貞腐れだの
ホームの破壊者だの
阿婆摺女の張本などと下らぬことを吐きやがるので煩くてたまらず
呆助さまと相談の上
手に手を取つてライオン川に投身し
霊界において完全なるホームを作り
恋愛味を味ははうと思つてやつて来た賢明な新しい女ですよ
コンモンセンスを欠いた社会の馬鹿人間は
トランセンデンタルな恋愛の権利を解せない馬鹿者ばかりですから
サツパリ社会が嫌になつてしまつたのです
相思の男女をして自由に結婚せしむるのがワイズ・ペアレントフッドでせう
今日の親といふものは
吾が子の恋愛までも抹殺しようとするのだから堪らないですよ
吾々はチヤステイテイなラブをもつて人生の最大要件と認めてゐるのです
イケ好かない男子と結婚するくらゐなら
むしろセリバシイ生活を送る方がなにほどましだか知れませぬわ
お前さまも
まだ年がお若いがきつと妻君があるでせう
氣に入つた妻君と添うてゐらつしやいますかな

こりやこりや女
こんなところで恋愛論をふりかざすところぢやないぞ
これから其方の罪悪を調べるのだ

高竹寺女学校の卒業生で
天才の誉をとつたおつやでござります
天才と秀才を兼ねた新しい女だから
たうていお前さまの頭へは入りますまい
ホーム・ウエーゼリ・ゼヤリーベの分らない
世に遅れた人間にはテンで話になりませぬワ
ラブ・イズ・ベストをもつて吾々目覚めた婦人は大理想としてゐるのですよ
何とまア氣の利かない顔してをりますね
ホゝゝゝゝ

このごろの女性には冥官もじつに往生だ
何はともあれ
其方のメモリアルを調べてやるから此方へ来い
高等女学校を高竹寺女学校とは何をいふか

妾の行状を調べるとは
そいつは面白い
純潔な婦人ですよ
サンナム・ボーナムの行なひを尽してきた才媛ですから
旧道徳の古い頭で御覧になれば罪悪かは知りませぬ
恋に目覚めたニユー・スピリツトを有する妾の主義は
世に遅れた
失敬ながらお前さまでは分りますまい
何といつても人間の世界ではラ・ヴイ・セクシユエルといつて性的生活をもつて第一とするのですから
このくらゐ最善の方法はありますまい
無理解な親に虐げられて
良心を枉げ結婚した夫婦は
いはば罪悪の最なるものと思ひます
愛なき結婚を強ひられて
朝から晩まで
夫婦がアンタゴーニズムの悲劇を演じてゐるよりも
相思の男女が互ひにホーリ・グレールを傾けて天国の法悦に酔ふのが
最も賢明な覚めた婦人のやり方です
お前さまは到底われわれを審判するだけの権能はありませぬよ
どうぞもうこの問題にはこの上クエーストして下さるな

おい呆助
お前はこのおつやを真から愛してゐるのか

ハイ
私はおつやの意見に共鳴してをります
よく考へて御覧なさい
恋愛といふものは至高至上のものでせう
恋愛至上の思想があつてここに初めて一夫一婦の制度に的確なる精神的・道徳的・合理的基礎を与ふることが出来るのです
それ以外の一夫一婦論は
いはゆる偽善説に非ざれば
単なる便宜的・因襲的・実理的の御都合主義か
または形式主義たるものに過ぎませぬ
かくのごときは少なくとも人間として第二義的の考察として取扱はるべき問題となると思ひます
至上至高の性的道徳としての恋愛は二つの人格の全的統合なるがゆゑに
そこに一夫一婦の原則が確認されたとすれば
必然的にこれと相即不離の関係をなして生ずるものはいはゆる貞操観念でせう
男女が互ひに貞操を厳守し格守することによつてのみ
この一夫一婦が完全に実現せられ得るものです
ゆゑに貞操は恋愛の神聖なる擁護者たると共に
また真の恋愛は必ず貞操が伴ふものです

ずゐぶん猛烈な恋愛関係だのう
嫉妬や悋氣が随分花を咲かしただらうのう

世間的・物質的の慾望に煩はさてゐない純真の恋愛の場合においては嫉妬なるものは必ずしも悪徳として非難せらるべきものでなく
むしろ双方の純潔を保たむとする貞操観念の副作用とも見られるのです
悋氣をせない女は明らかに不貞の女である場合が最も多いものです
それ故われわれは悋氣もしたり
イチヤついてもみたり
低氣圧が両人の間に起つたりすることは
幾度か出現しますが
これがいはゆる貞操観念の濃厚なる証拠であらうと思ひます
エヘゝゝゝゝ

アーア
サツパリ煙に捲かれてしまつた
御両人
お目出たう
この先はどうなるか知りませぬが
まづ伊吹戸主神様の前で諄々と恋愛神聖論でもまくし立てなさるが宜しからう
しかしおつやの夫はここを通過したから
さぞ今頃は伊吹戸主神の前でお前ら両人の現界における一切の行動を陳述したであらう
さア早くお通りなさい

ハイ
下らぬことを申しまして誠に済みませぬ
しかしながらわれわれ両人の結合力は極めて硬固なものでござりますから
たとへ地獄の底へ落とされても滅多に分離などはいたしませぬワ

エー
やかましい
そんな問題は審判廷で蝶々とまくし立てたが宜しからう
早く通れ

二人は睦じさうに手を曳きながらいそいそとして門を潜り入る

何とまア脱線した女が来たものだなア
これからはチツと方針を変へなくちやなりますまいぞや

いかにも
非常に現界には魔風恋風が吹き荒んでゐると見えますな
これではたうてい社会の秩序は保たれますまい
アゝ困つたことだア

・・・「人(霊止)還りの道」619編へつづく


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