「人(霊止)還りの道」497編


オイ
最前から大分
天の沼矛を虐使したので
喉がかわき
口角の泡も非常に粘着性をおびてきたぢやないか
マア茶なつと一杯やりたまへ
茶は鬱を散じ
心氣を養ひ
かつまた心魂をして安静せしむるものだからなア

茶には色がある
色はすなはち能くうつらふものだ
花の色はうつりにけりな徒に
わが身世にふる眺めせしまに
とかナイスがいつたさうだ
俺は茶はきらひだ
それよりも少しも色なき水晶のやうな清水が好きだ
その透徹振りは正に自足他に求むるなき君子の坦懐
道交を表すものだ
かく一杯の水にも
神の恵のこもらせたまふ以上は
ポートワインの美酒も
つひに及び難き道味の淡然として
掬してなほ尽くるなきものがある
仁者は山を楽しみ
智者は水を楽しむ
とかいつてな
われわれには水晶の水が霊相応だよ
しかして山をも水をも併せ楽しむこの俺さまは
いはゆる智者仁者の典型だ

智仁兼備の聖人君子の名を盗まうとする白昼の野盗
一言天下を掩有せむとする曲漢
そこ動くな
と一刀を引き抜き
切つてすつべきところなれども
今日は〇〇〇将軍の帷幕に参ずる顕要な地位に上つた祝ひとして忘れてつかはす

アツハゝゝ
唐変木だなア
茶の好きな人間の精神は
ヤツパリ滅茶苦茶だ
茶目小僧的人格者だ
そんなことで
〇〇〇将軍の帷幕に参ずるなどとは
サツパリ茶目だ
いな駄目だよ

吾々はことさら山に入つて山を楽しみ
水に近づいて水を楽しまなくても
人生の一切を客観して
冷然としてこれに対することが出来るのだから
紅塵万丈の裡
恩愛重絆の境域
なほそこに
山中の静寂と清水の道味を楽しむことが出来るのだ

ずゐぶん小理屈がうまくなつたねえ

きまつたことだ
今までの狂乱痴呆兼備の勇者たる乱痴の〇〇〇将軍の教とは
天地霄壤の差があるのだからなア

コリヤそんな大きな声でいふと
〇〇〇将軍の耳へ這入るぞ
チツとたしなまないか

ナーニ
なにほど大きな声でいつたところで
神格の内流を受けたる証覚者の聖言が耳へとほる氣遣ひがあるかい
〇〇〇将軍の耳へ通ずる言葉は
虚偽と計略と悪慾と女色くらゐなものだ
さういふ地獄的言葉は
なにほど小さい声で囁いてをつても直ぐに聞こえるものだ
要するに
その内分が塞がり
外分のみが開けてゐるのだからなア
世間的罪悪に充ちた□□□□軍の統率者に
われわれの聖言が聞こえる道理はない
まづ安心したまえ
それよりも
あの△△△を見よ
本当に馬鹿にしてゐよるぢやないか
いかに世間の交際は
黄金多からざれば交はり深らず
といつても
実に呆れたものぢやないか
今日の交際は
水臭いといふよりも
むしろ銅臭いものだ
わづかに五千両の軍用金を献納しよつて
△△△の野郎
駕籠で送られ
腐つたやうな女を伴れて
堂々と〇〇〇将軍に面会を申し込み
将軍もまた顔の相好をくづして
抱擁キツスはどうか知らぬが
固き握手を交換したぢやないか
これやモウ本当に厭になつてしまつた

本当にさうだねえ
黄金万能の世の中とは
よくいつたものだ

しかしながら
〇〇〇将軍に今まで仕へてをつたのは
彼が有する暴力と権威に恐れたがためだ
つまり言へば
表面上の主従であつて
精神上から言へば
仇敵も同様だ
どうして馬鹿らしい
精神的仇敵のために貴重な生命が捨てられようか

さうだな
俺も同感だ
しかし
まさかの時になつたら
親のためにあるひは主のために
師匠のために
死ぬこたアできまい
俺だつてさうだ
しかしながら
子孫のためには死んでみせてやる
それも霊体脱離の時期が来たらだ
アハゝゝゝ

オツホゝゝゝ
何をぬかしやがるのだい
人を馬鹿にしてゐやがる
チツと真面目にならないか
エゝー

このやうな化物の横行する世の中に
どうして真面目に着実にしてをれようかい
真面目な正直な仁義に篤い人間は
現代においては
かへつて悪人と見做されるからなア
天下のため
社会のため
人のためだと
うまい標語を語つて
どいつも此奴も自己の欲望を達せむことのみを望んでゐる世の中だ
俺たちはさういふ贋物はきらひだ
清明無垢の小児のごとき
赤裸々の言葉と行ひが好きなのだ

・・・「人(霊止)還りの道」498編へつづく


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