「人(霊止)還りの道」448編


霊界(中有界/精霊界)の八衢の関所とは天国へ上り行く人(霊止)と地獄へ落ちる人間(ジンカン)とを査べる二つの役人がある
天国へ行くべき人に対しては色の白き優しき守衛がこれを査べる
地獄へ行くべき人間に対しては形相凄じい赤い面した守衛がこれを査べる

コラ待てツ

何だ
天下の大道を往来するのに
待てツといつて妨げる不道理なことがあるか
エー
俺をどなたと心得てゐる
傷死位窘死等
死爵鬼族淫偽員
慾野深蔵といふ紳士だ
邪魔をいたすと
交番へ引き渡さうか

コリヤ深蔵
貴様はチツとばかり酒に喰ひ酔うてゐるな
いま紳士紳商だと吐したが
慾にかけたら親子の間でも公事を致したり
また人の悪口を針小棒大に吹聴いたし
自己の名利栄達を計り
身上をこしらへた真極道だらう
チヤンとここな帳面についてゐるのだ
なんぼ娑婆で羽振りがよくても
霊界へ来てはもはや駄目だ

ここの衡にかかれ
貴様の罪を測量してやらう

さうすると
ここはヤツパリ冥途でげすかなア

氣がついたか
貴様は積悪の酬いによりて
地震のために震死した震死代物だらう

なるほど
さう承れば
朧げに記憶に浮かむできますワイ

その方は慾野深蔵といつたな
幼名は渋柿泥右衛門と申さうがな

ハイ
ヨク深いところまで御存じでございますなア
それに間違ひはございませぬ

その方は娑婆において
殺人鉄道嵐脈会社の社長兼取締役を致してをつたであらう

ハイ
その通りでございます

優先株だとか
幽霊株だとか申して
沢山な蕪や大根を
金も出さずに吾が物にいたしただらう

ハイ
そんな事もあつたでせう
しかし
それを致さねば現界においては
鬼族院偽員になることも出来ず
紳士紳商といはれることも出来ませぬから
娑婆の規則によつて
やむを得ず優勝劣敗的行動をいたしました
コリヤ決して私の罪ではありませぬ
社会の罪でございます
何分社会の組織制度が
さうせなくちやならないやうになつてゐるのですからなア

馬鹿申せ
そんな法律が何時発布されたか

表面から見れば
左様な事はありませぬが
その内容および精神から考へれば
法文の裏をくぐるべく仕組まれてあるものですから
これをうまく切り抜ける者が
娑婆の有力者といふ者です
総理大臣やあるひは小爵や柄杓や疳癪などの高位に昇らうと思へば
真面目くさく
法文などを守つてをつちや
娑婆では犬に小便をかけられ
猫にふみつぶされてしまひますワ
郷に入つては郷に従へですから
娑婆ではこれでも立派な公民
紳士中でも錚々たる人物でございます
ここへ来れば凡ての行り方が違ふでせうが
娑婆は娑婆の法律
霊界は霊界の法律があるでせう
まだ霊界へ来てから
善もやつた事がない代りに
悪をやる暇もありませぬ
娑婆の事まで
死んだ子の年をくるやうに
こんな所でゴテゴテいはれちや
やり切れませぬからなア
エゝ
何だか氣がせく
かやうな所でヒマ取つては
第一タイムの損害だ
娑婆で金貸しをしてをつた時にや
寝とつても起きとつても
時計の針がケチケチと鳴るうちに
金の利息が
一万円札で一枚づつ
輪転機で新聞を印刷するやうに
ポイポイと生れて来たものだが
最早ここへ来ては無一物だ
これからは一つ冥途を開拓して
娑婆にをつた時よりも
モ一つ勉強家となり
大地主となつて
冥途の一生を送りたい
どうぞ邪魔をして下さるな

この騒ぎに伊吹戸主の神は八衢の関所の窓をあけてちよつと覗かせ給うた
慾野深蔵は判神の霊光に打たれてアツとその場に悶絶し蟹のやうな泡を吹いて苦しみ出した
たちまち八衢の館の一方より数人の番卒現はれ来たり慾野深蔵の体を荷車に乗せガラガラガラガラといやらしき音をさせながらどこともなく運び去つた
これは地獄道の大門口内へ放り込みに行つたのである
慾野深蔵は暗き門内へ放り込まれハツと氣がつきブツブツ小言を小声で囁きながらトボトボと慾界地獄を指して進み行くのであつた

・・・「人(霊止)還りの道」449編へつづく


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