「人(霊止)還りの道」414編


一日の太陽が神の御守りの下に静かに暮れてゆきてやがて平和な閑寂な夜が地の上に訪れ遠寺の鐘の音・塒求むる鳥の声など漸くをさまり四辺は死んだやうに静かになつてきた
そして鉄瓶の蓋が湯氣にあふられて鳴る声が何となく胸に響いて命の綱の恋と金とを奪はれて眠りもやらず胸にとどろく狂瀾怒濤を抑へることにのみ疲れはて鏡台の前に向かつてマジマジと自分の姿を見れば両頬の痩せこけたのを見るにつけてもわが身老いゆきしことその両眼がスグツと涙になる

アゝ
こんなことではいけない
モウ少し確りして
神様のお道を歩み直さねばなるまい
アゝア
しかし今宵の苦しさといつたら
石を抱かされ
算盤の上へすわらされて
無実の拷問をうけてゐるやうな苦しさだ

人と人とを繋いでゐた糸が切れて行方も知らぬ荒野を独り寂しげに逍遥ふ心地がし出した

アゝ
どうしたらよからうかな
安心立命を得むとして神を信じ神を愛し
舎身的活動をやつて来たのだ
それにまた何としてかやうなみじめな目に会つたのだろ
世の中に不幸な人はこの妾ばかりではあるまい
さりながらまた妾のやうな悲痛な残酷な憂目に会つた者もまたとあるまい
馬鹿らしさ
恥づかしさ
腹立たしさ
モウ立つてもゐてもゐられないやうになつてきた
アゝ
どうしようぞいなア

鏡台の前に老躯を投げつけるやうにして愚痴つてゐる

アゝ
さうださうだ
人には三つの宝がある
その宝は決して物質的の宝でも
変則的情慾でもない
神様に対する恋愛だ
第一に愛
第二に信仰
第三に希望だ
この三つの歓喜を離れては
一日だつて暗黒の世の中に立つてゆく事はできない
アゝ
誤れり誤れり
誠の神様は
三五の教を守り給ふ太柱
神素盞嗚大神様
今日まで仁慈無限のあなたの御恵を蒙りながら
少しも弁へず
邪教に従ひ
御無礼ばかりを申しました
その心の罪が鬼となつて
今私を責めてゐるのでございませう
アゝ
吾が敵はわが身体の中にひそんでをりました
祓ひ給へ清め給へ

悔悟の涙にくれややしばし沈黙の淵に沈みつつあつた
しばらくするとどこともなく燦然たる光明が輝き来たり全身を押し込むやうな氣分がして何時とはなしに夢路を辿つてゐた
ヂツと眠つてゐる目の底には美はしき天国の花園が開けてきた
そして牡丹や芍薬やダリヤの花が錦のやうに咲き盛つてゐる中を紅白種々の胡蝶と共に遊び歩いてゐるやうなえも言はれぬ氣持ちになつて来た
フト目をさまして独り言

アゝ
仁慈深き五六七大神様の光明に照らされて
転迷開悟の花がわが胸中に開きました
薫しき風が胸を洗つて通るやうになりました
今まで人を救ひたい救ひたいとの念は時々刻々に沸騰して
胸に火を焚いたことは幾度か知れませぬ
しかしながら万民どころか
自分一人を救ふ事もできなかつた
かよわい私たることを徹底的に悟らしていただきました
自分一人の徹底した救ひは
やがて万人の救ひであり
万人の救ひは
自分一人の自覚すなはち神を信じ神を理解し
真に神を愛し
自分はその中に含蓄される以外にないものだといふことを
御神徳に依つて深く深く悟らしていただいたことを有難く感謝いたします

悲哀にくれた涙はたちまち歓喜の涙と変り心天高きところに真如の日月輝きわたり幾十万の星は燦然として身を包みがごとき高尚な優美な清浄な嵩大な氣分に活かされてきた
俄かに法悦の涙にむせ返り褥をけつて起き上がり口を漱ぎ手を洗ひ神殿に進んで感謝祈願の祝詞をはじめて心の底より嬉しく奏上することを得た

実に理解と悔悟の力くらゐ結構なものはない
その心霊を永遠に生かしその肉体をして精力旺盛ならしむるものは実に真の愛を悟り真の信仰に進みそして真に神を理解しおのれを理解するより外に途はないものである

・・・「人(霊止)還りの道」415編へつづく


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