「人(霊止)還りの道」314編


旅人の生命養ふ清水かな
滾々と水の御霊の湧き出でにけり
あゝうまいうまいと掬ぶ清水かな
汗までが姿を隠す清水かな
喉笛の調子を直す清水かな
岩清水尊き神の恵みなり
有難し尊し岩清水

夜の途の西方からコチンコチンと杖の先で道の小石を叩きながら登つて来た一人の白髪の老人あり
老人は杖の先にてあたりをグイグイと突いてゐる

ダダ誰だい
俺の頭を杖でこづきよつた奴は
ふざけた事をしよると承知しないぞ

アハゝゝゝ
あまり暗いものだから
何だか鼾がするので近寄つて見れば
暗がりに光つたものが一つ
その横に黒いものがまた一つ倒れてゐるので
こりやまた狸の睾丸ではあるまいかと思つて
杖の先で一寸いぢつてみたのだよ
何を言ふても暗がりといひ
老人で目が疎いのだから
頭の一つやそこら割れたつて辛抱して下さい
なにほど腹が立つても老人は大切にせねばならぬ規則だからのう

どこの老人か知らぬが
知らぬとやつたことは仕方がないとしても
ただ一言の断わりも言はず
反対に老人尊敬論をまくし立てよつて太い奴だ
大方お前は化洲だらう
さア
正体を現はせ

オホゝゝゝ
どうせ化洲に違ひないが
儂でさへも肝を潰すやうな闇の中に
よう光る薬鑵頭があつたものだから
ヒネた狸の睾丸ではあるまいかと
ちよつと泥のついた杖の先でいぢつてみたのだから
了簡さつしやい
知らぬ神に祟りなしといふから
さう老人に毒つくものぢやありませぬぞや

もしお爺さま
知らずにしたことは仕方がありませぬ
こちらも両人の者が
この木の下に逗留してゐるといふ広告を出しておかないものだから
間違へられても何ともいふ事はできませぬ
お爺さま
この暗いのにお前は一体何処へ行くつもりだえ

儂は仕方がない極道息子が二人あつて
この坂を今登つて来るはずだから迎へに来たのだよ

ヘエ
そのまた二人の息子とはどんな人ですか

さうだなア
一人は暗の晩でも薬鑵のやうに頭が光つて
ちよつと腰が曲り背の低い男だ
そして一人は少し図体の大きい三十男だが
そいつはまた癖が悪くて弱い相撲取り
負けて負けて負け通し
人から鍋蓋とまで名を取つた困つた倅だよ
アタいやらしい振舞ひ酒に酔ふて肝腎の主人を見失ひ
話にも杭にもかからぬ
極道息子だよ

心も暗い両人が
暗い峠を登り来る
後先見ずの暗雲で
心の舵を取り外し
顔と顔とが衝突し
薬鑵頭が鼻打つて
赤い鼻血をタラタラと
流して踞むいぢらしさ

はるばるつらつて来た友の
難儀を見捨ててスタスタと
高山峠を一散に
登つて出てくる不人情
人(霊止)の皮着た代物の
平氣で出来る業ぢやない

貴様二人の心には
黒い顔した鬼がゐる
その鬼どもを追ひ出して
生まれ赤児になりかはり
尻の掃除をよつくして
尊き神の御使と
早くなれなれよく仕へ

吾は月照彦神
お前の御魂を磨き上げ
誠の神の生宮と
造り直して神界の
御用をさせてやりたいと
ここに姿を現はして
お前ら二人に眼を醒まし
無限の力をそれぞれに
配り与ふる神ながら

神の御息に生まれたる
汝はこれから謹みて
誠一つを立て通し
早く御魂を立て直し
清明無垢の身となつて
厳の御魂や瑞御魂
開き給ひし三五の
教の柱となれよかし

神は汝の身を守り
魂を守つて何時までも
太しき功を立てさせむ

・・・「人(霊止)還りの道」315編へつづく


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