「人(霊止)還りの道」308編


折しも忽然として現はれた三尺ばかりの一人の童子
顔を見上げてニヤリと笑ひ

吾が恋は深谷川の丸木橋
渡るにこはし渡らねば
思ふ方には会はれない

謡つたきりポツと白煙と共に消えてしまつた
この時またもや忽然として七八人の小さき童子
現はれ互ひに手をつなぎながら

それ出た
やれ出た
現はれた
向日峠の山麓の
楠の木陰に鬼が出た
鬼かと思へば恐ろしい
大蛇の三公が現はれて
お愛の方を縛りつけ
高山彦といふ男
兼公までもフン縛り
穴を穿つて埋けよつた
大きな岩が乗つてある

またもやプスと童子の姿は消え後には白煙が幽かにゆらいでいる

なてな
合点のゆかぬことだな
いま現はれた童子は魔か神か
何かは知らぬが
何とはなしに氣がかりなことを言つたやうだ

そこに力なげにチヨロチヨロと現はれ来た十四五才の女がある
見れば目を腫らし色青ざめ髪ふり乱し着物には土が一ぱい着いてゐる
その娘をグツと背に負ひ杖を力に雑草生ひ茂る山道を吾を忘れて進み行く

そこの楠の根元に
沢山な石が積んでございませう
あそこに姉さまや
二人の方が埋められてをられます

あわただしくその塚の前に馳せ寄り背中より娘を下ろし一所懸命の金剛力を出して口に神号を称へながら巨大な石に手をかけ押せども突けどもビクとも動かぬのに落胆し涙をタラタラと流しながら一所懸命に天津祝詞を奏上し始めた
このとき丸木橋の袂に現はれた三尺ばかりの八人の童子
どこともなく出で来たり
巨大なる石を鞠を投げるやうに軽そうにポイポイと取り除け四五間先へ投げつけてしまつた
さうして又もや白煙となつて童子の姿は見えなくなつた
感謝の涙に咽びつつ一所懸命に土を掻き分け汗みどろとなつて掘りだした
見れば二人の男と一人の女が一緒に枕を並べて埋められてゐる
三人の身体を掘り上げ青草の上に寝かせ手早く縛めの縄を一々解き天の数歌を歌ひ上げ三人の蘇生を祈つた
女はウンと一声叫ぶとムツクリと起き上がり二人の男に一所懸命に鎮魂をなし天の数歌を謡ひ上げると男二人はやうやくウーンと呻きて起き上がり四辺をキヨロキヨロ見廻してゐる

これはこれは
どなたか存じませぬが
よくもまあ生命を拾つて下さいました
悪者のためにこんなところに
生き埋めにされてをりました
モ少しあなたがお出でが遅かつたら
生命は助かりませぬでした
かうなつたのも全く天罰でございませう
どうぞ神様にお詫びをして下さいませ

まあ
何よりも結構でございました
わたしも結構なお神徳を頂きまして
こんな氣持ちの良いことはぞざいませぬ
さうお礼を言つてもらひましては
わたしの折角の善行が煙となつて消えてしまひます
何事もみな神様が助けて下さつたのです
大きな岩石で圧さつけてあつたこの塚はわたしの力に及ばず
苦しみ悶えてゐる矢先
木花咲耶姫様の御化身が現はれて
岩を取り除けて下さいました
そのお蔭で皆さまをお助けすることが出来ましたのですから
どうぞ神様にお礼を申し上げて下さい

朝日は照るとも曇るとも
月は盈つとも虧くるとも
たとへ大地は沈むとも
いかなる災難来たるとも
神に任した神司
誠一つを立て貫けよ
神は汝と倶にあり
汝の誠現はれて
汝を救ふ神の道

この世を救ふ生神は
至る所に神坐ます
神の恵みを諾ひて
あくまで行けよ丸木橋
いかに危ふく見えつれど
汝の心に信仰の
誠の花の咲くならば
易く渡らむ神の橋
進めよ進め早渡れ

・・・「人(霊止)還りの道」309編へつづく


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