「人(霊止)還りの道」277編


御倉山と云ふ高山に国人の信仰によりて竜世姫命を奉斎したるかなり立派な社が建つてゐた
これを御倉の社と云ふ
御倉山は大山脈の最もすぐれて高き峰であり麓は清き広き谷川が飛沫を飛ばして唸りを立てこの谷川の魚に限つて御倉魚と称する
この御倉魚は長さ五六尺のいろいろ雑多の斑紋ある美しき魚が沢山に棲んでゐる
されど国人はこの御倉魚は全く御倉の社の御使と信じて捕獲せむとする者は一人もなかつた
もしもこの魚を取り食ふ者ある時はたちまち口歪み唖となりその顔面全部に青・赤・白・黄・紫・萌黄が現はれると云はれこの魚を捕獲する者なきのみならずこの魚を見れば神のごとくに尊敬し手を合はせて願望を祈願するを常としてゐた

ある時この地域は連日雨降らず草木はほとんど枯葉のごとく果物は実入らず五穀もまた一粒も取れずそれがため路傍に餓莩充ちその惨状目も当てられないばかりであつた
あまたの国人は御倉山の山麓に集まりこの御倉魚に向かつて餓饉を免れることを祈願する者引きも切らず御倉山の谷間はほとんど人をもつて埋もれてゐた

なにほど有難いことを聞かしてもらふても
我々を救ふ者は
食物より外にはない
この通り沢山の魚が泳ぎゐるを見ながら
捉へて食ふことを許されず
もし食はばたちまち神罰にふれ
眼は眩み
口は曲り
顔に斑紋を生じ
たちまち我が身が我が姿に恐るるごとき形相になつてしまふ
どうしたらよからうかなア

神が表に現はれて
善と悪とを立別ける
この世を造りし神直日
心も広き大直日
ただ何事も人の世は
直日に見直せ聞直せ

過ちあれば宣直す
仁慈無限の三五の
教を守らす百の神
この国人の惨状を
完美に委細に見そなはし
飢ゑに悩める民草の
生命を助け給へかし

その生魂は天国の
恵を如何に受くるとも
今目のあたりに身体の
悩みを救ひ与へずば
心は拗け魂くもり
神の御国に昇るべき
珍の身魂もたちまちに
根底の国に陥らむ

この谷川を見わたせば
所狭きまで泳ぎゐる
げに美しき御倉魚
彼らに与へ給へかし

神は霊界のみならず
この世に住める人々を
一人も残さず御恵の
露にうるはせ永久の
命を守らせ給ふなり

これの谷間に寄り来たる
飢ゑになやめる人々を
視るに忍びず天地の
神の御前に請ひまつる
神の使の魚ならば
世人の命を保つため
神よ吾らに賜へかし

吾はこれより諸人に
谷間の魚を生捕らせ
命を助け与へなむ

人民まさに餓死せむとする危急存亡の場合なればいかに神の御使なればとて仁慈無限の神のこれを許させたまはざる道理がありませうか
モシ左様な神ありとせば取りも直さず八岐大蛇の醜神かあるひは金毛九尾の悪狐かまたは曲鬼の所為でござらう
神の御子たる人(霊止)を魔道に導き苦しむる悪逆無道の行り方と思はねばならぬ
今この御倉魚を取り食へばとて神罰の当たるべき理由は毛頭ありませぬ

これによりこの地方一帯の住民はそのほとんど全滅せむとしたるを御倉魚を食することを許されてよりたちまち元氣快復し御倉の社に国常立命・豊国姫命その他諸神霊を合祀し崇敬の的と定めたまひぬ

・・・「人(霊止)還りの道」278編へつづく


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