「人(霊止)還りの道」227編


オイ地蔵さま
お前はいつも美しい顔をして慈悲の権化ともいふやうに見せてござるがずゐぶん冷酷なものだなア
どこを撫でてもチツとも温味がありやしない
なんぼ地蔵だといつてもかう蒲鉾のやうに石に半身をくつつけて半分体を出したところでまるで磔刑に遇ふたやうなものだよ
今の世界悪の映像はちやうどお前がいい代表者だ
外面如地蔵・内面如閻魔の世の中の型が映つてゐるのだなア
おほかた幽界で高歩貸でも行つてをるのだろう

なアに今の社会の奴ア
追々と渋とうなつてきやがつて俺の商売もサツパリ算用合ふて銭足らず
あちらからも小便をかけこちらからも小便をかけまるで世界の奴ア犬のやうなものだよ
借る時にや尾をふつて出てくるが返せと言へば鬼権だとか何とか云つてかぶりつく咬み犬のやうな奴ばつかりだ
俺も仕方がないで高歩貸をフツツリと断念し菩提心を起こして石地蔵になり世界の亡者を助けてやらうと思つて終始一貫不動の精神をもつて路の辻に鯱こばつてをれば俺に金を借つた奴が借る時の地蔵顔そして済す時の閻魔顔ついひには悪魔道に落ちた報ひで情けない
犬に性を変じて再び娑婆に現はれまたしても小便をかけて通りよる
本当に人間(ジンカン)と云ふ奴は仕方のないものだ

悪党は何ほど氣張つても仏にはなれませぬぞえ
鬼にもなれずマア石地蔵に小便をかけて歩く犬くらゐなものだ
けれども幽界では顔だけは人間たることを許される
それだから人犬(ニンケン)と云ふのだ
娑婆で石灰竈の鼬のやうなコテコテ塗つた魔性の女や化女・売淫女・夜鷹なぞにいつも現を抜かして鼻毛を抜かれ眉毛をよまれ涎を垂らかし骨まで蒟蒻のやうにしられてきた代物どんな物喰ひのよい助作だからヤツパリ幽界へ来てもその癖が止まらぬとみえる
娑婆から幽界へそんな糟を持越してもらつては閻魔さまもいささか迷惑だらう
地蔵顔してお前の巾着ばつかり狙つてをる魔性の女は有界にも多数にをるからご註文なら幾らでも招集して来ませうか
いかにもお前は畜生道へ落転主義だらう
再び鼬となり業を経て貂に進む進貂主義を実行なさいませ
地蔵(自業)自得だから諦めて行きなさい

地蔵にもイロイロの種類があるが俺は善悪両面を兼ねた活仏だ
俺がお前に対し柔らかく親切に持ちかけるのも辛く当るのもみんなお前の心一つだ
善も悪も全部この地蔵の方寸にあるのだ
昔から地蔵(地頭)に法なしといつて天下は地蔵の自由だ
馬鹿正直な善だの悪だのとにはか上人になつて迂路つくものぢやない
なぜ生地そのままの正体を現はさぬのか

寝惚けて辻地蔵の前に寝転び夢を見る
心の底より洒落なる氣品に惚込み
筒井順慶式を発揮すべく進み行く

・・・「人(霊止)還りの道」228編へつづく


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